シリーズ:実験シリーズ(フェーズ3)
対応ロードマップ:フェーズ3 / E3-07
この記事で扱う範囲:E3-06 で計算したピッチ角・ロール角を使い、しきい値を超えたら 異常姿勢 と判定します。今回は、異常姿勢を検出したら RUN から ERROR へ状態を移し、安全停止処理につなげるところまで確認します。
1. 目的
今回は、IMUから求めたピッチ角・ロール角を使って、 倒れそうな姿勢を検出する入口 を作ります。
E3-06では、加速度X/Y/Zからピッチ角とロール角を計算し、UARTログに表示しました。
今回は、その次のステップとして、
ピッチ角またはロール角が大きすぎる
↓
異常姿勢と判定する
↓
RUN状態をやめる
↓
ERROR状態へ移る
↓
安全停止処理を行う
という流れを作ります。
今回のゴールは、正確な転倒判定ではありません。
まずは、
- 姿勢角にしきい値を付ける
- しきい値を超えたら異常と判定する
- 異常時に状態を
RUNからERRORへ移す ERROR状態では動作を止める
という、安全停止の基本的な流れを体験することです。
将来的にサーボを動かすようになると、
「倒れそうなのに動き続ける」ことは危険です。
そのため、今回の実験は、2足歩行ロボットの安全設計に向けた重要な入口になります。
2. 前提・環境
2-1. 前提
この記事は、次の内容が終わっている前提で進めます。
- フェーズ0:ビルド / 書き込み / main到達 / UARTログ出力
- E2-02:1msごとの時刻を作る
- E2-03:周期処理
- E2-05:状態で整理(IDLE / RUN / ERROR)
- E3-00:I2C配線の“詰まりどころ”を先に潰す
- E3-01:0x68 に対して応答があるか確認する
- E3-02:WHO_AM_I を1バイト読める
- E3-03:加速度X軸を2バイト連続で読める
- E3-04:加速度3軸とジャイロ3軸の生値を周期的に読める
- E3-05:静止時のズレを平均して引く考え方を確認している
- E3-06:加速度からピッチ/ロールを計算できる
2-2. 使用するもの
- 評価ボード:RTK7EKA8M2S00001BE
- e² studio + FSP
- Tera Term
- IMUモジュール:QCIOT-ICM42688P(PMOD BOARD ICM-42688-P)
- USB-UART変換ケーブル(またはUSB-UART変換モジュール)
- ジャンパ線(UART接続用)
2-3. 今回の前提条件
接続条件は、E3-04 / E3-05 / E3-06 と同じ下記条件です。
- 通信方式:I2C
- 接続方法:QCIOT-ICM42688P の J1 を評価ボードの Pmod1(J26)へ接続
- 評価ボード側設定:SW4-1 = OFF、SW4-2 = ON
- AD0:Low(J4 にジャンパキャップあり)
- I2Cアドレス:0x68
- I2C通信速度:100kHz
2-4. 今回使う値
今回は、E3-06で計算した次の2つを使います。
pitch_deg
roll_degこの2つに対して、しきい値を設定します。
たとえば今回は、最小実装として次のようにします。
#define POSTURE_PITCH_LIMIT_DEG (35.0f)
#define POSTURE_ROLL_LIMIT_DEG (35.0f)つまり、
- ピッチ角の絶対値が35度を超えたら異常
- ロール角の絶対値が35度を超えたら異常
と判定します。
ここでの35度は、あくまで実験用の値です。
実際のロボットでは、
- 重心
- 足の形
- サーボの動作速度
- 歩行中の揺れ
- IMUの取り付け位置
- どの程度傾いたら危険か
によって調整が必要になります。
3. 今回の変更点
3-1. 配線変更
今回は配線変更はありません。
E3-06と同じ下記の接続です。
- QCIOT-ICM42688P の J1 を評価ボードの Pmod1(J26)へ接続
- 評価ボード側は SW4-1 = OFF、SW4-2 = ON
- J4 にジャンパキャップあり
3-2. 設定変更
FSP の I2C Master 設定は、E3-06と同じ下記の設定です。
- 通信方式:I2C Master
- アドレス幅:7bit
- 通信速度:100kHz
- スレーブアドレス:0x68
- Callback:
i2c_master_callback
また、E2-02 / E2-03 と同じように、1ms周期のタイマが動いている前提です。
3-3. コード変更
今回は、E3-06のコードに次の処理を追加します。
- アプリの状態を表す
app_state_tを追加する - エラー理由を表す
app_error_tを追加する - ピッチ/ロールがしきい値を超えたか判定する
- 異常姿勢を検出したら
RUNからERRORへ移す ERROR状態では安全停止処理を行う
今回の中心は、次の考え方です。
姿勢角を読むだけで終わらせず、状態遷移につなげる
E3-06までは、ログに角度を出すだけでした。
今回は、その角度を使って、
この姿勢は危ない
とプログラム側で判断します。
これにより、IMUの値が「見るための値」から、 ロボットを守るための「判断材料」に変わります。
4. 異常姿勢とは何か
4-1. 今回の異常姿勢の考え方
今回は、次のどちらかに当てはまったら異常姿勢とします。
|pitch| > 35度
|roll| > 35度
|pitch| は、ピッチ角の絶対値です。
たとえば、
pitch = 40度→ 異常pitch = -40度→ 異常pitch = 10度→ 正常
という意味です。
プラス方向に大きく傾いても、マイナス方向に大きく傾いても、
どちらも危険な傾きとして扱います。
4-2. なぜ絶対値で見るのか
倒れそうかどうかを見る場合、最初は向きよりも 傾きの大きさ が大事です。
たとえば、前に35度以上傾いても、後ろに35度以上傾いても、
どちらも危険な状態と考えられます。
そのため今回は、次のように絶対値で判定します。
if (fabsf(p_angle->pitch_deg) > POSTURE_PITCH_LIMIT_DEG)
{
異常姿勢
}fabsf() は、float の絶対値を求める関数です。
4-3. 1回だけ超えたらすぐ止めるべきか
本当の安全停止では、異常を見つけたらすぐ止める方が安全です。
ただし、今回のように加速度から求めた簡易ピッチ/ロールは、
手で動かした瞬間や振動で一時的に大きく変わることがあります。
そこで今回は、初心者向けの実験として、
連続して数回しきい値を超えたら異常 とします。
たとえば、
#define POSTURE_ERROR_CONFIRM_COUNT (3U)として、3回連続で異常姿勢なら ERROR に入るようにします。
これにより、1回だけのブレで止まりすぎる問題を少し減らせます。
ただし、実際のロボットでは安全優先なので、
この回数やしきい値は、機体に合わせて慎重に決める必要があります。
5. 状態遷移の考え方
5-1. 今回使う状態
今回は、状態を次のように分けます。
| 状態 | 意味 |
|---|---|
APP_STATE_INIT | 初期化中 |
APP_STATE_RUN | IMUを読み、姿勢を監視している状態 |
APP_STATE_ERROR | 異常を検出し、安全停止している状態 |
今回の中心は、次の遷移です。
RUN → ERROR
5-2. RUN状態で行うこと
RUN 状態では、周期的に次の処理を行います。
IMUを読む
ピッチ/ロールを計算する
異常姿勢か判定する
ログを出力する
正常なら、そのまま RUN を続けます。
異常姿勢が続いたら、ERROR へ移ります。
5-3. ERROR状態で行うこと
ERROR 状態では、安全停止処理を行います。
今回の段階では、まだサーボを動かしていないため、実際にサーボを止める処理はありません。
そのため、今回は次のような「安全停止の入口」として作ります。
安全停止処理を呼ぶ
エラーログを出力する
以後はRUNに戻らない
将来、サーボ制御に進んだら、ここに次のような処理を追加します。
- PWM出力を安全な値にする
- サーボの動作指令を止める
- モーション更新を停止する
- 必要ならトルクOFF相当の処理を行う
- BLEやUARTでエラー状態を通知する
今回は、そのための「置き場所」を作るイメージです。
6. 手順
6-1. E3-06と同じ条件で接続する
まず、これまでと同じ条件で、QCIOT-ICM42688P と評価ボードを接続します。
- QCIOT-ICM42688P の J1 を評価ボードの Pmod1(J26)へ接続
- SW4-1 = OFF
- SW4-2 = ON
- J4 にジャンパキャップあり
6-2. プログラムを書き込む
今回のコードを書き込みます。
コードの中心は、次の4つです。
imu_read_raw_data()
加速度3軸とジャイロ3軸を読むimu_calc_pitch_roll()
加速度X/Y/Zからピッチ/ロールを計算するposture_is_abnormal()
ピッチ/ロールがしきい値を超えているか判定するsafe_stop()
異常時の停止処理を行う
6-3. Tera Termを開く
E3-06と同じように、Tera TermでUARTログを確認します。
通信条件は、自分のプロジェクト設定に合わせます。
これまでの実験と同じ設定でログが出ていれば、そのままで問題ありません。
6-4. ボードを水平に置いて確認する
まず、評価ボードを机の上に静かに置きます。
このとき、STATE=RUN のままログが出続ければOKです。
STATE=RUN ACC X= -120 Y= 340 Z= 16320 | PITCH= 0.42 deg ROLL= 1.19 deg
完全に0度になる必要はありません。
6-5. ボードをゆっくり傾ける
次に、ボードをゆっくり前後または左右に傾けます。
ピッチまたはロールがしきい値を超えると、異常姿勢としてカウントされます。
STATE=RUN ACC X= 9800 Y= 250 Z= 12800 | PITCH= -37.40 deg ROLL= 1.12 deg
WARN: abnormal posture count=1
6-6. しきい値超えを続ける
傾けた状態を少し続けると、異常姿勢が連続して検出されます。
WARN: abnormal posture count=2
WARN: abnormal posture count=3
ERROR: abnormal posture detected
SAFE STOP
この後、状態は ERROR になり、RUN の処理は行いません。
7. コード
※下記は考え方を分かりやすくするためのシンプルな例です。
※ I2Cインスタンス名、UARTインスタンス名、タイマ名、コールバック名は、自分のプロジェクトに合わせて置き換えてください。
※ atan2f() / sqrtf() / fabsf() を使うため、math.h をインクルードします。
※ 今回の safe_stop() は、まだサーボ停止の本実装ではありません。将来、PWMサーボ制御に進んだときに中身を追加します。
#include "hal_data.h"
#include <stdio.h>
#include <string.h>
#include <stdbool.h>
#include <stdint.h>
#include <math.h>
#define IMU_I2C_ADDR (0x68U)
/* ICM-42688-P Register */
#define IMU_REG_ACCEL_DATA_X1 (0x1FU)
#define IMU_REG_PWR_MGMT0 (0x4EU)
#define IMU_REG_GYRO_CONFIG0 (0x4FU)
#define IMU_REG_ACCEL_CONFIG0 (0x50U)
/* 0x1F から 0x2A まで読むので 12バイト */
#define IMU_RAW_DATA_LENGTH (12U)
/* 設定値 */
#define IMU_PWR_MGMT0_ACCEL_GYRO_LN (0x0FU)
#define IMU_GYRO_CONFIG0_100HZ (0x08U)
#define IMU_ACCEL_CONFIG0_2G_100HZ (0x68U)
#define I2C_TIMEOUT_COUNT (100000U)
#define IMU_LOG_INTERVAL_MS (500U)
#define IMU_RAD_TO_DEG (57.2957795f)
/* 異常姿勢判定用 */
#define POSTURE_PITCH_LIMIT_DEG (35.0f)
#define POSTURE_ROLL_LIMIT_DEG (35.0f)
#define POSTURE_ERROR_CONFIRM_COUNT (3U)
typedef enum e_app_state
{
APP_STATE_INIT = 0,
APP_STATE_RUN,
APP_STATE_ERROR
} app_state_t;
typedef enum e_app_error
{
APP_ERROR_NONE = 0,
APP_ERROR_IMU_INIT,
APP_ERROR_IMU_READ,
APP_ERROR_ABNORMAL_POSTURE
} app_error_t;
typedef struct st_imu_raw_data
{
int16_t accel_x;
int16_t accel_y;
int16_t accel_z;
int16_t gyro_x;
int16_t gyro_y;
int16_t gyro_z;
} imu_raw_data_t;
typedef struct st_imu_angle
{
float pitch_deg;
float roll_deg;
} imu_angle_t;
static volatile bool g_i2c_done = false;
static volatile bool g_i2c_error = false;
static volatile uint32_t g_ms_count = 0U;
static app_state_t g_app_state = APP_STATE_INIT;
static app_error_t g_app_error = APP_ERROR_NONE;
static uint32_t g_posture_error_count = 0U;
static void uart_print(const char * p_text);
static bool imu_write_register_1byte(uint8_t reg_addr, uint8_t value);
static bool imu_read_register_bytes(uint8_t reg_addr, uint8_t * p_buffer, uint32_t length);
static bool imu_init(void);
static bool imu_read_raw_data(imu_raw_data_t * p_data);
static void imu_calc_pitch_roll(const imu_raw_data_t * p_raw, imu_angle_t * p_angle);
static bool posture_is_abnormal(const imu_angle_t * p_angle);
static void app_run_task(void);
static void app_error_task(void);
static void safe_stop(void);
static int16_t make_int16(uint8_t upper, uint8_t lower);
static void print_imu_state_data(const imu_raw_data_t * p_raw, const imu_angle_t * p_angle);
static const char * app_state_to_string(app_state_t state);
static const char * app_error_to_string(app_error_t error);
void i2c_master_callback(i2c_master_callback_args_t * p_args)
{
if (NULL == p_args)
{
return;
}
switch (p_args->event)
{
case I2C_MASTER_EVENT_ABORTED:
{
g_i2c_error = true;
g_i2c_done = true;
break;
}
case I2C_MASTER_EVENT_RX_COMPLETE:
case I2C_MASTER_EVENT_TX_COMPLETE:
{
g_i2c_error = false;
g_i2c_done = true;
break;
}
default:
{
break;
}
}
}
/* E2-02 / E2-03 で作った 1msカウンタ用のコールバック例 */
void timer0_callback(timer_callback_args_t * p_args)
{
if (NULL == p_args)
{
return;
}
if (TIMER_EVENT_CYCLE_END == p_args->event)
{
g_ms_count++;
}
}
void hal_entry(void)
{
fsp_err_t err;
err = R_SCI_B_UART_Open(&g_uart0_ctrl, &g_uart0_cfg);
if (FSP_SUCCESS != err)
{
while (1)
{
;
}
}
uart_print("IMU abnormal posture safety stop start\r\n");
err = R_IIC_MASTER_Open(&g_i2c_master0_ctrl, &g_i2c_master0_cfg);
if (FSP_SUCCESS != err)
{
uart_print("I2C open error\r\n");
g_app_state = APP_STATE_ERROR;
g_app_error = APP_ERROR_IMU_INIT;
}
if (APP_STATE_ERROR != g_app_state)
{
err = R_IIC_MASTER_SlaveAddressSet(&g_i2c_master0_ctrl,
IMU_I2C_ADDR,
I2C_MASTER_ADDR_MODE_7BIT);
if (FSP_SUCCESS != err)
{
uart_print("Slave address set error\r\n");
g_app_state = APP_STATE_ERROR;
g_app_error = APP_ERROR_IMU_INIT;
}
}
if (APP_STATE_ERROR != g_app_state)
{
if (!imu_init())
{
uart_print("IMU init error\r\n");
g_app_state = APP_STATE_ERROR;
g_app_error = APP_ERROR_IMU_INIT;
}
else
{
uart_print("IMU init OK\r\n");
g_app_state = APP_STATE_RUN;
g_app_error = APP_ERROR_NONE;
}
}
while (1)
{
switch (g_app_state)
{
case APP_STATE_RUN:
{
app_run_task();
break;
}
case APP_STATE_ERROR:
{
app_error_task();
break;
}
case APP_STATE_INIT:
default:
{
break;
}
}
}
}
static void app_run_task(void)
{
static uint32_t last_log_ms = 0U;
imu_raw_data_t imu_raw;
imu_angle_t imu_angle;
char msg[100];
if ((g_ms_count - last_log_ms) < IMU_LOG_INTERVAL_MS)
{
return;
}
last_log_ms += IMU_LOG_INTERVAL_MS;
if (!imu_read_raw_data(&imu_raw))
{
uart_print("IMU raw read error\r\n");
g_app_state = APP_STATE_ERROR;
g_app_error = APP_ERROR_IMU_READ;
return;
}
imu_calc_pitch_roll(&imu_raw, &imu_angle);
print_imu_state_data(&imu_raw, &imu_angle);
if (posture_is_abnormal(&imu_angle))
{
g_posture_error_count++;
snprintf(msg, sizeof(msg),
"WARN: abnormal posture count=%lu\r\n",
(unsigned long)g_posture_error_count);
uart_print(msg);
if (g_posture_error_count >= POSTURE_ERROR_CONFIRM_COUNT)
{
uart_print("ERROR: abnormal posture detected\r\n");
g_app_state = APP_STATE_ERROR;
g_app_error = APP_ERROR_ABNORMAL_POSTURE;
}
}
else
{
g_posture_error_count = 0U;
}
}
static void app_error_task(void)
{
static bool first = true;
char msg[100];
if (first)
{
first = false;
safe_stop();
snprintf(msg, sizeof(msg),
"STATE=%s ERROR=%s\r\n",
app_state_to_string(g_app_state),
app_error_to_string(g_app_error));
uart_print(msg);
}
/*
* 今回は復帰処理を入れない。
* ERRORに入ったら、安全側として停止したままにする。
*
* 将来は、ボタン操作や通信コマンドで
* エラー解除・再初期化・安全確認後の復帰などを追加する。
*/
}
static void safe_stop(void)
{
/*
* 今回はサーボ制御前なので、実際に止める対象はまだない。
* そのため、ここでは安全停止処理の入口としてログを出す。
*
* 将来、PWMサーボ制御に進んだら、ここに次のような処理を追加する。
* - サーボ出力を停止する
* - モーション更新を停止する
* - 安全姿勢に移す
* - 必要ならトルクOFF相当の処理を行う
*/
uart_print("SAFE STOP\r\n");
}
static bool posture_is_abnormal(const imu_angle_t * p_angle)
{
if (NULL == p_angle)
{
return true;
}
if (fabsf(p_angle->pitch_deg) > POSTURE_PITCH_LIMIT_DEG)
{
return true;
}
if (fabsf(p_angle->roll_deg) > POSTURE_ROLL_LIMIT_DEG)
{
return true;
}
return false;
}
static bool imu_init(void)
{
if (!imu_write_register_1byte(IMU_REG_PWR_MGMT0, IMU_PWR_MGMT0_ACCEL_GYRO_LN))
{
return false;
}
/* 加速度・ジャイロをOFFからONにした直後は少し待つ */
for (volatile uint32_t i = 0; i < 50000U; i++)
{
__asm volatile ("nop");
}
if (!imu_write_register_1byte(IMU_REG_GYRO_CONFIG0, IMU_GYRO_CONFIG0_100HZ))
{
return false;
}
if (!imu_write_register_1byte(IMU_REG_ACCEL_CONFIG0, IMU_ACCEL_CONFIG0_2G_100HZ))
{
return false;
}
return true;
}
static bool imu_read_raw_data(imu_raw_data_t * p_data)
{
uint8_t raw[IMU_RAW_DATA_LENGTH];
if (NULL == p_data)
{
return false;
}
if (!imu_read_register_bytes(IMU_REG_ACCEL_DATA_X1, raw, IMU_RAW_DATA_LENGTH))
{
return false;
}
p_data->accel_x = make_int16(raw[0], raw[1]);
p_data->accel_y = make_int16(raw[2], raw[3]);
p_data->accel_z = make_int16(raw[4], raw[5]);
p_data->gyro_x = make_int16(raw[6], raw[7]);
p_data->gyro_y = make_int16(raw[8], raw[9]);
p_data->gyro_z = make_int16(raw[10], raw[11]);
return true;
}
static void imu_calc_pitch_roll(const imu_raw_data_t * p_raw, imu_angle_t * p_angle)
{
float ax;
float ay;
float az;
if ((NULL == p_raw) || (NULL == p_angle))
{
return;
}
ax = (float)p_raw->accel_x;
ay = (float)p_raw->accel_y;
az = (float)p_raw->accel_z;
p_angle->roll_deg = atan2f(ay, az) * IMU_RAD_TO_DEG;
p_angle->pitch_deg = atan2f(-ax, sqrtf((ay * ay) + (az * az))) * IMU_RAD_TO_DEG;
}
static int16_t make_int16(uint8_t upper, uint8_t lower)
{
return (int16_t)(((uint16_t)upper << 8) | lower);
}
static bool imu_write_register_1byte(uint8_t reg_addr, uint8_t value)
{
fsp_err_t err;
uint8_t write_buf[2];
uint32_t timeout;
write_buf[0] = reg_addr;
write_buf[1] = value;
g_i2c_done = false;
g_i2c_error = false;
err = R_IIC_MASTER_Write(&g_i2c_master0_ctrl, write_buf, 2U, false);
if (FSP_SUCCESS != err)
{
return false;
}
timeout = I2C_TIMEOUT_COUNT;
while ((false == g_i2c_done) && (timeout > 0U))
{
timeout--;
}
if ((0U == timeout) || (true == g_i2c_error))
{
return false;
}
return true;
}
static bool imu_read_register_bytes(uint8_t reg_addr, uint8_t * p_buffer, uint32_t length)
{
fsp_err_t err;
uint32_t timeout;
if ((NULL == p_buffer) || (0U == length))
{
return false;
}
/* 1) 読みたい先頭レジスタ番号を書く */
g_i2c_done = false;
g_i2c_error = false;
err = R_IIC_MASTER_Write(&g_i2c_master0_ctrl, ®_addr, 1U, true);
if (FSP_SUCCESS != err)
{
return false;
}
timeout = I2C_TIMEOUT_COUNT;
while ((false == g_i2c_done) && (timeout > 0U))
{
timeout--;
}
if ((0U == timeout) || (true == g_i2c_error))
{
return false;
}
/* 2) 指定バイト数だけ連続で読む */
g_i2c_done = false;
g_i2c_error = false;
err = R_IIC_MASTER_Read(&g_i2c_master0_ctrl, p_buffer, length, false);
if (FSP_SUCCESS != err)
{
return false;
}
timeout = I2C_TIMEOUT_COUNT;
while ((false == g_i2c_done) && (timeout > 0U))
{
timeout--;
}
if ((0U == timeout) || (true == g_i2c_error))
{
return false;
}
return true;
}
static void print_imu_state_data(const imu_raw_data_t * p_raw, const imu_angle_t * p_angle)
{
char msg[220];
if ((NULL == p_raw) || (NULL == p_angle))
{
return;
}
snprintf(msg, sizeof(msg),
"STATE=%s ACC X=%6d Y=%6d Z=%6d | PITCH=%7.2f deg ROLL=%7.2f deg\r\n",
app_state_to_string(g_app_state),
p_raw->accel_x,
p_raw->accel_y,
p_raw->accel_z,
p_angle->pitch_deg,
p_angle->roll_deg);
uart_print(msg);
}
static const char * app_state_to_string(app_state_t state)
{
switch (state)
{
case APP_STATE_INIT:
{
return "INIT";
}
case APP_STATE_RUN:
{
return "RUN";
}
case APP_STATE_ERROR:
{
return "ERROR";
}
default:
{
return "UNKNOWN";
}
}
}
static const char * app_error_to_string(app_error_t error)
{
switch (error)
{
case APP_ERROR_NONE:
{
return "NONE";
}
case APP_ERROR_IMU_INIT:
{
return "IMU_INIT";
}
case APP_ERROR_IMU_READ:
{
return "IMU_READ";
}
case APP_ERROR_ABNORMAL_POSTURE:
{
return "ABNORMAL_POSTURE";
}
default:
{
return "UNKNOWN";
}
}
}
static void uart_print(const char * p_text)
{
fsp_err_t err;
err = R_SCI_B_UART_Write(&g_uart0_ctrl, (uint8_t *) p_text, strlen(p_text));
if (FSP_SUCCESS != err)
{
while (1)
{
;
}
}
/*
* UART送信完了待ちの簡易版。
* 本格的にはUARTコールバックで送信完了を待つ形にする。
*/
for (volatile uint32_t i = 0; i < 1000000U; i++)
{
__asm volatile ("nop");
}
}8. コードの見方(今回大事なところだけ)
8-1. 状態を表す app_state_t
今回は、アプリの状態を次のように定義しています。
typedef enum e_app_state
{
APP_STATE_INIT = 0,
APP_STATE_RUN,
APP_STATE_ERROR
} app_state_t;今回の状態は、次の意味です。
APP_STATE_INIT:初期化中APP_STATE_RUN:通常監視中APP_STATE_ERROR:異常検出後、安全停止中
E2-05で扱った状態整理の考え方を、IMUの異常判定に使っています。
8-2. エラー理由を表す app_error_t
異常が起きたとき、ただ ERROR と出すだけだと原因が分かりにくくなります。
そこで、今回はエラー理由も分けています。
typedef enum e_app_error
{
APP_ERROR_NONE = 0,
APP_ERROR_IMU_INIT,
APP_ERROR_IMU_READ,
APP_ERROR_ABNORMAL_POSTURE
} app_error_t;たとえば、
- IMU初期化に失敗した
- IMU読み取りに失敗した
- 異常姿勢を検出した
を分けてログに出せるようにしています。
これにより、あとでトラブルが起きたときに、「何が原因で止まったのか」を追いやすくなります。
8-3. 異常姿勢を判定する関数
異常姿勢の判定は、次の関数にまとめています。
static bool posture_is_abnormal(const imu_angle_t * p_angle)
{
if (NULL == p_angle)
{
return true;
}
if (fabsf(p_angle->pitch_deg) > POSTURE_PITCH_LIMIT_DEG)
{
return true;
}
if (fabsf(p_angle->roll_deg) > POSTURE_ROLL_LIMIT_DEG)
{
return true;
}
return false;
}ここで重要なのは、判定処理を app_run_task() の中に直接書きすぎず、posture_is_abnormal() という関数に分けている点です。
こうしておくと、あとで条件を変えたいときに修正しやすくなります。
たとえば将来、
- ピッチだけ厳しくする
- ロールだけ緩くする
- 急に角度が変わったときも異常にする
- 電圧低下も異常条件に加える
といった変更がしやすくなります。
8-4. fabsf() で絶対値を見る
今回の判定では、次のように fabsf() を使っています。
fabsf(p_angle->pitch_deg)これは、float の絶対値を求める関数です。
たとえば、
pitch = 40.0 → fabsf(pitch) = 40.0
pitch = -40.0 → fabsf(pitch) = 40.0となります。
前方向でも後ろ方向でも、大きく傾いたら危険としたいので、 今回は絶対値で判定しています。
8-5. 連続して異常ならERRORにする
今回のコードでは、1回しきい値を超えただけでは、すぐ ERROR にしていません。
g_posture_error_count++;
if (g_posture_error_count >= POSTURE_ERROR_CONFIRM_COUNT)
{
uart_print("ERROR: abnormal posture detected\r\n");
g_app_state = APP_STATE_ERROR;
g_app_error = APP_ERROR_ABNORMAL_POSTURE;
}POSTURE_ERROR_CONFIRM_COUNT を3にしているため、 3回連続で異常姿勢になったら ERROR へ移ります。
正常姿勢に戻った場合は、カウントを0に戻します。
g_posture_error_count = 0U;これにより、一瞬だけ値が跳ねた場合に止まりすぎる問題を少し減らします。
8-6. safe_stop() は停止処理の置き場所
今回の safe_stop() は、まだログを出すだけです。
static void safe_stop(void)
{
uart_print("SAFE STOP\r\n");
}理由は、今回のフェーズではまだサーボを動かしていないからです。
ただし、ここに safe_stop() を作っておくことが大事です。
今後、PWMサーボ制御に進んだら、ここに停止処理を追加できます。
たとえば、
サーボ出力を止めるモーション更新を止める安全姿勢に移すエラー状態をBLEで通知する
といった処理を、ここに入れていきます。
今回の記事では、まず 安全停止処理の入口 を作ることが目的です。
9. 実行結果
9-1. 水平に置いたとき
まず、ボードを机の上に置きます。
このとき、ログは次のようになります。
IMU abnormal posture safety stop start
IMU init OK
STATE=RUN ACC X= -120 Y= 340 Z= 16320 | PITCH= 0.42 deg ROLL= 1.19 deg
STATE=RUN ACC X= -130 Y= 360 Z= 16310 | PITCH= 0.46 deg ROLL= 1.26 deg
STATE=RUN ACC X= -110 Y= 330 Z= 16330 | PITCH= 0.39 deg ROLL= 1.16 degこの状態では、ピッチ/ロールがしきい値を超えていないため、STATE=RUN のまま動作します。
見るポイントは、次の通りです。
STATE=RUNになっている- ピッチ/ロールが大きすぎない
WARNやERRORが出ていない
9-2. 少し傾けたとき
次に、ボードを少し傾けます。
STATE=RUN ACC X= 5200 Y= 200 Z= 15400 | PITCH= -18.65 deg ROLL= 0.74 deg
STATE=RUN ACC X= 6200 Y= 180 Z= 14900 | PITCH= -22.58 deg ROLL= 0.69 degこの程度では、まだ35度を超えていないため、正常扱いです。
9-3. 大きく傾けたとき
さらに大きく傾けると、しきい値を超えます。
STATE=RUN ACC X= 9800 Y= 250 Z= 12800 | PITCH= -37.40 deg ROLL= 1.12 deg
WARN: abnormal posture count=1
STATE=RUN ACC X= 10100 Y= 260 Z= 12500 | PITCH= -38.91 deg ROLL= 1.19 deg
WARN: abnormal posture count=2
STATE=RUN ACC X= 10400 Y= 280 Z= 12200 | PITCH= -40.30 deg ROLL= 1.31 deg
WARN: abnormal posture count=3
ERROR: abnormal posture detected
SAFE STOP
STATE=ERROR ERROR=ABNORMAL_POSTUREここで確認したいのは、次の流れです。
RUN中に角度を読む
↓
しきい値を超える
↓
WARNが出る
↓
連続して異常ならERRORになる
↓
SAFE STOPが出る
これで、ピッチ/ロールの数値を安全停止へつなげる入口ができました。
9-4. ERRORに入ったら戻らない
今回のコードでは、ERROR に入ったあと、自動で RUN には戻りません。
これは、安全側の考え方です。
実際のロボットでは、倒れた可能性がある状態で勝手に動き始めると危険です。
そのため、今回の段階では、
異常を検出したら止まったまま
にしています。
将来は、
- ボタンでリセットする
- BLEからエラー解除コマンドを送る
- 姿勢が安全範囲に戻ったことを確認してから復帰する
- サーボ電源やバッテリー状態も確認する
といった復帰処理を追加します。
10. ハマりポイント/原因と対策
10-1. すぐに ERROR になる
原因
- しきい値が小さすぎる
- ボードを水平に置いていない
- IMUモジュールの取り付け向きが想定と違う
- ピッチ/ロールの符号や軸の見え方が想定と違う
- 起動直後の値が安定する前に判定している
対策
- まず水平に置いたときの
PITCH/ROLLを確認する - 水平時に何度くらい出ているかメモする
- 最初はしきい値を大きめにする
例:35.0fではなく45.0fにして試す - 起動直後すぐに判定せず、数回ログを見てから確認する
- E3-06に戻り、ピッチ/ロールが自然に変化しているか確認する
10-2. 大きく傾けても ERROR にならない
原因
- しきい値が大きすぎる
- 傾けている方向と、判定している軸が合っていない
posture_is_abnormal()が呼ばれていないg_posture_error_countが増えていないPOSTURE_ERROR_CONFIRM_COUNTが大きすぎる
対策
- ログで
PITCH/ROLLの値を確認する - 実際に何度まで変化しているか見る
- まずはしきい値を小さめにして試す
例:35.0fではなく20.0fにして動作確認する WARN: abnormal posture count=が出るか確認するPOSTURE_ERROR_CONFIRM_COUNTを一時的に1Uにして、判定が動くか確認する
10-3. WARN は出るが ERROR にならない
原因
- 異常姿勢が連続していない
- 傾けたり戻したりしているため、カウントが0に戻っている
POSTURE_ERROR_CONFIRM_COUNTに到達していない- ログ周期が長く、確認しにくい
対策
- しきい値を超えた姿勢を少し維持する
WARNのカウントが増えているか確認する- 一時的に
POSTURE_ERROR_CONFIRM_COUNTを1Uにする IMU_LOG_INTERVAL_MSを短くして、ログを見やすくする
例:500Uから200Uにする
10-4. IMU raw read error になる
原因
- I2C読み取りが失敗している
- E3-04 / E3-06 の生値取得が安定していない
- レジスタアドレスを書いたあとに読み取りへ進めていない
- I2Cコールバックで完了イベントを受け取れていない
- タイムアウト待ちが短すぎる
対策
- まず E3-04 に戻り、加速度/ジャイロの生値が読める状態に戻す
ACC X= ... Y= ... Z= ...が出ることを確認するR_IIC_MASTER_Write()のあとに、完了待ちが入っているか確認するR_IIC_MASTER_Read()のあとに、完了待ちが入っているか確認するI2C_MASTER_EVENT_TX_COMPLETE/I2C_MASTER_EVENT_RX_COMPLETEを受けているか確認する
10-5. ビルドエラーになる
原因
math.hをインクルードしていないfabsf()の関数名を間違えているapp_state_t/app_error_tの定義を追加していないposture_is_abnormal()の宣言と定義が合っていないsafe_stop()の宣言と定義が合っていない- 数学ライブラリがリンクされていない
対策
- 先頭に
#include <math.h>があるか確認する fabsf/atan2f/sqrtfのつづりを確認する- 関数のプロトタイプ宣言があるか確認する
app_state_tとapp_error_tの定義があるか確認するatan2f/sqrtf/fabsfのリンクエラーの場合は、数学ライブラリのリンク設定を確認する
10-6. SAFE STOP が出たあと何も動かない
原因
- 今回のコードでは、
ERRORから自動復帰しない作りにしている - 安全側として、異常検出後は止まったままにしている
- 復帰処理をまだ実装していない
対策
- 今回は正常な動作と考える
- 再度試す場合は、いったんリセットして起動し直す
- 将来、復帰処理を追加する場合は、ボタンや通信コマンドで解除する形を検討する
- ただし、実際のロボットでは、安全確認なしに自動復帰させない方がよい
11. 今回わかったこと
今回の実験で大事なのは、
姿勢角をログ表示で終わらせず、安全停止の判断に使える ということです。
E3-06では、加速度からピッチ/ロールを計算しました。
今回は、その角度にしきい値を付けて、
傾きが大きすぎる → 異常姿勢 → ERROR → SAFE STOP
という流れを作りました。
今回できるようになったことは、次の通りです。
- ピッチ/ロールにしきい値を付ける
fabsf()で傾きの大きさを見る- 異常姿勢を検出する
- 異常が連続したら
RUNからERRORへ移す ERROR状態で安全停止処理を呼ぶ- エラー理由をログに出す
今回の安全停止は、まだ本物のサーボ停止ではありません。
ただし、将来サーボ制御に進んだとき、safe_stop() の中にサーボ停止処理を追加すれば、今回の考え方をそのまま使えます。
つまり今回は、ロボットを壊さないための状態遷移の土台 を作ったことになります。
12. 次回やること
次回は、ロードマップ上では センサ値を“軽く”なめらかにする処理 に進みます。
今回の異常姿勢判定では、ピッチ/ロールが一瞬だけ大きく変わると、WARN が出ることがあります。
加速度から求めた角度は、手で動かした瞬間や振動で揺れます。
そのため次回は、移動平均などの簡単な方法で、
値のバラつきを少し減らす
ことを確認します。
これにより、異常姿勢判定や今後の姿勢補正で、値の揺れに振り回されにくくなります。
13. 関連リンク
- E3-00:I2C配線の“詰まりどころ”を先に潰す
- E3-01:I2C接続確認:0x68 に対して応答があるか確認
- E3-02:1レジスタ読み:WHO_AM_I を読む
- E3-03:連続読み:加速度X軸を2バイト読む
- E3-04:IMU生値取得:加速度とジャイロの生値を周期的に読んでログに出す
- E3-05:オフセット補正(簡易):静止時のズレを平均して引いてみる
- E3-06:ピッチ/ロール推定(最小):加速度から傾きをそれっぽく出してみる
- E3-08:センサ値を“軽く”なめらかにする(移動平均など)
- 基礎シリーズ:状態遷移の超入門(INIT / IDLE / RUN / ERROR)
- 基礎シリーズ:UARTログ入門
- 基礎シリーズ:タイマで周期処理
- 基礎シリーズ:C言語のif / switch
- 基礎シリーズ:センサと姿勢推定の入口(予定)